なんかいいことおまへんか!!

健康で文化的な生活について。つまり、ダイエットと、文学と、映画。

四畳半タイムマシンブルースの感想とか。

2005年に太田出版から『四畳半神話大系』が出版されてはや16年。

2010年にフジテレビのノイタミナ枠でアニメ化されてはや10年。

久しぶりの!腐れ大学生活が舞台の!森見登美彦の!著作!!それが!四畳半タイムマシンブルース!!

懐かしさと新作が出た喜びに思わず手に取ってしまったのでいろいろと書こうかなーどうしようかなーと考えたところ、いやお前そろそろ何かしら書けや、と内なるジョニーが語り掛けてきたのでリハビリがてら感想でも書くかね。もう過去の文体なんか忘れてしまって候。どうにかして取り戻したい。

  

 

あらすじはこんな感じ。

水没したクーラーのリモコンを求めて昨日へGO! タイムトラベラーの自覚に欠ける悪友が勝手に過去を改変して世界は消滅の危機を迎える。そして、ひそかに想いを寄せる彼女がひた隠しにする秘密……。
森見登美彦の初期代表作のひとつでアニメ版にもファンが多い『四畳半神話大系』。ヨーロッパ企画の代表であり、アニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当した上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』。互いに信頼をよせる盟友たちの代表作がひとつになった、熱いコラボレーションが実現!

 

そうそう。特設サイトや動画もあったので掲載しておこう。主人公である私のナレーション!なつかしい……

 

https://kadobun.jp/special/yojohan-timemachine/

 

ということで、下敷きはご存じ『サマータイムマシン・ブルース』。こちらも瑛太上野樹里の主演で映画化されたのも記憶に新しい。って思ったけどこっちはこっちで映画化されたのは2005年とか。嘘だといってよ、バーニィ

ご存じと申し上げたがぼくは未見である。

それはそうと本題に入る。表紙は先ほど掲載してるので割愛するとして、ページを開くと、アニメ化されたときのキャラクターデザイン。これだよこれ!この安心感。そして……見知らぬキャラクターが後ろにデデン!と。お前誰だ!鉄郎か??はたまたジョージ秋山の書く動きと心が読めないキャラクターか?それともお笑い第七世代、宮下草薙は草薙か?

 

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似ていると個人的に思ってるキャラクター挙げたけど、この子が今回の騒動を一段と盛り上げるメンバー「田村くん」である。モッサリとした感がよくでてるモッサリよ。

この子と例のメンツがあーだこーだやる具合のストーリーなので、なんというかこうシリーズ物の安心感と、原案を森見登美彦氏がどう料理するのかを楽しめばよいかと。ちなみに、原案と映画は未見だったので、結末までぼくは楽しめた。あまりストーリーについてグダグダと書くのはこれに限って言えば無粋なので割愛させていただこう。

 

さて、こうして小説はエンターテイメント的に楽しく読めたのだけど、気づいたことが二つあって。

 

一つは、アニメ化されたキャラクターが活字になると、会話や地の文がそのキャラクターの声で脳内再生されるということ。これが面白い。ライトノベル読んだことあまりないのだけど、もしかしたらこういった現象が多々発生するのかもしれん。メディアミックスの功よね。とくに四畳半タイムマシンブルースは一人称での語りなのですんなりと入ってくる。一時期流行った(今も流行ってるけど)2.5次元的ミュージカルなんかを考えるときにも敷衍できそう。

 

二つ目はなんとなく重苦しい話。現実的には今この時代では例のウイルスの仕業でこういった大学生活を送れないという悲しさがあるよね、それにどう向き合うのがいいのかね、ということ。もう30代のおっさんなので大学生活を回顧しながらあの時ああいうイベント体験したかったちくしょう!的なのももうないのだけど、例えば今年の春に大学入学、授業はほとんどオンライン、部活やサークルにも入れない、新歓もなければ新しく友人をつくる機会もないという大学生が多いのではないかということ。

悪友で黒い糸で結ばれている小津とか、何を考えているか全くわからない時空のはざまで生きている先輩とか、下鴨神社で偶然出会い、落としてしまったぬいぐるみを拾い上げて渡すことがきっかけで知り合った明石さんとか、そういった大学生活を彩る友人や恋人などとの偶然の出会いが剥奪されるというのはとても残酷なことだと思う。

かといって、対面授業やサークル活動再開させましょうというのも難しい問題で。ぼくが大学に入学したのがちょうど2005年ごろ、この本の単行本が出版された年でそこから登美彦氏の著作とともに大学生活を過ごしてきたといっても過言ではなく、その時には同じ大学生として経験に基づくエンパシーがあったりするのだけど、果たしていま(2020年8月現在)の学生が共感できるかと思うと、それは少し難しいというか、どちらかというとこの小説のようなドタバタ劇はいまは二重にも三重にも「起こりえない」ものだということで、せめて小説の中だけでは大学生活を楽しんでほしいとしか言えない。そして、それを楽しめるか、という問題でもあったりする。現役大学生はどのような感想を持つのだろうか。少し気になる。

さて、ここまでくると話広げすぎ問題になってしまうし、自分は新型コロナウイルスと文学の作用についてキャッチアップできていないのでまたほかの機会に譲る。

結びに入ろう。

そもそも『四畳半神話大系』は「あったかもしれない」複数のパラレルワールドを書いた作品で、その続編である『四畳半タイムマシンブルース』もその並行世界のうちの一つの続編なので、もしかしてこの本の結末も…という考えがよぎったけれど、とりあえず俺はこう言いたいよ。「登美彦!!お前は!!最後の最後に!!やってくれたな!!!」と。結末を刮目してご覧じろ。16年間フォローした甲斐があるってもんですよ!