『人新世の「資本論」』年末年始読書2020~2021その3
果たしてこのタイミングで年末年始と呼べるのか。ともかく、読んだのは年末年始なので今回を限りにこの表題は打ち止めですね。
今回読んだのは、斎藤幸平『人新世の「資本論」』です。ちょうどNHKの「100分de名著」でもマルクスの『資本論』は取り上げられてましたからね。乗るしかない、このビッグウェーブに。
だって、働けど働けどわが暮らしなお楽にならざり、じゃないですか。ぢっと手を見るじゃないですか。格差社会、能力のない人間は低賃金でOK、努力できないのは本人のせい、果ては障害も病気も自己責任に帰結される、そんな価値観で覆いつくされている日本社会なので、それを迎え撃つ言説を期待するじゃないですか。ふざけんなという狼煙を期待するじゃないですか。それがマルクス、資本論というのには期待するじゃないですか。
そういえば2020年前半には資本論関連の著作で白井聡『武器としての「資本論」』も出版されましたね。時代の機運が資本主義(の限界)や資本主義に覆いつくされた現代社会の違和感について考えることを後押ししているのではないでしょうか。
ぼく自身もこちらの『人新世の資本論」』と合わせて『武器としての「資本論」』は読みました。本丸のマルクス『資本論』に挑戦するのは難解すぎてお手上げ状態なので入門書でお茶を濁そうという算段です。それではやっていきましょう。
だいたいこんな話
人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。 気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。 それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。 いや、危機の解決策はある。 ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。 世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!人新世の「資本論」 – 集英社新書 (shueisha.co.jp)
ちなみに章立てとしてはこんな感じです。
第1章:気候変動と帝国的生活様式
第2章:気候ケインズ主義の限界
第3章:資本主義システムでの脱成長を撃つ
第4章:「人新世」のマルクス
第5章:加速主義という現実逃避
第6章:欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
第7章:脱成長コミュニズムが世界を救う
第8章:気候正義という「梃子」
おわりに――歴史を終わらせないために
新書ですが、およそ365Pというしっかりとしたボリュームなので全部について書きだすとキリがないので、全体の感想やまとめと個人的に興味深かった第6章の欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズムについて取り上げようと思います。
人新世とマルクス
まずは全体の感想とまとめから。
『人新世の「資本論」』の全体的なテーマ。それは地球温暖化を食い止めるには、いまの資本主義というシステムではダメで、ではどうするのか?
マルクスが到達した「脱成長コミュニズム」というシステムにあるのでは?というとことです。
パッと見て、かなり大上段に振りかぶった構想だな、とぼくは思いましてね。というのも、環境問題も労働問題もマルクスも表面上は繋がりが見えないのですから。
言ってしまえば、最初の導入部を読んでる段階では、ぼくの心の中の関暁夫が「この理論、信じるか信じないかはあなた次第です」とニヤリとつぶやいたものです。かなりアクロバティックな紐づけをしているな、と。
一見すると危うい紐づけに思える構想を、快刀乱麻を断つような論理展開で解きほぐす手法は見事です。前半部分での僕の心の中の関暁夫は読み進めるうちにいつの間にかどこかに行ってしまった。
また、想定されることの一つである、共産主義社会や社会主義は困窮を招いて失敗に終わっているじゃないか、という指摘への反駁も用意されています。とはいえ、全体を見てみるといくつかの点で批判的にならざるを得ないですが。これについては後述します。
さて、簡単にまとめてみましょう。
耳慣れない言葉である「人新世(ひとしんせい)」ですが、由来はノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンが提唱したもので、「地質学的に見て、地球は新たな年代に突入した、それが人新世であり、人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代」という意味。
人新世では、とりわけ、人類の営みによって温室効果ガスのひとつである大気中の二酸化炭素の排出量が加速度的に増えており、異常気象や地球温暖化の原因となっています。
二酸化炭素排出量を減らすには資本主義経済の元での経済成長では二酸化炭素排出を十分な速さで削減するには不可能であることが本書の第二章で示されています。他にも科学技術の発展に期待することの困難さなどが全体の前半部分で割かれています。
では人新世での地球温暖化に立ち向かうにはどうすればよいのか?
そこで第四章「人新世」のマルクスの章において、資本主義批判とポスト資本主義を考えるためにマルクスと資本論を持ち出すわけです。これこそが『人新世の「資本論」』の主題だといえるでしょう。
特にカギとなるのが「コモン」や「コミュニズム」、「アソシエーション」という概念です。
なぜいまマルクスなのか、という視点にも「MEGA(マルクス・エンゲルス全集)」という国際的プロジェクトが進んでおり、そこに今までになかった新しい視座があると著者は述べています。
その視座とは、今までのマルクス像であった「生産力至上主義」からの大転換「脱成長コミュニズム」であり、著者の試みは、人新世での環境問題に立ち向かうためにマルクスが到達した「脱成長コミュニズム」を理論化、実現を構想することにあります。
このようなことが本書の全体の流れとなります。その流れの中でマルクスが提示した概念である「価値」と「使用価値」、「自然的物質代謝」などを用いて議論を進めていきます。
この中で「価値」と「使用価値」について特に触れる機会の多い第六章:欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム について考えてみたいと思います。
欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
毎朝満員電車に詰め込まれ、コンビニの弁当やカップ麺をパソコンの前で食べながら、連日長時間働く生活に比べれば、はるかに豊かな人生だ。そのストレスを、オンライン・ショッピングや高濃度のアルコール飲料で解消しなくてもいい。自炊や運動の時間が取れるようになれば、健康状態も大幅に改善するに違いない。
私たちは経済成長からの恩恵を求めて、一生懸命に働きすぎた。一生懸命に働くのは、資本にとって非常に都合がいい。……p267
悲しみに溢れる文章ですね。これを書いているのは休日なのですが、平日はいつもいつもこんな感じです。労働!飲酒!いつの間にか終わっている休日!これが毎日!それはもう絶望しか感じないじゃないですか。世の中に跳梁跋扈するブラック企業、まさに現代の奴隷制。じつはマルクスも資本主義に生きる労働者のあり方を奴隷制と呼んでいたとのこと(p253)。
しかも労働者は使い捨て、「お前の替わりはいくらでもいる」という言葉も労働者を追い詰めるありふれた言葉になっています。
第六章が面白いのは、これまでの章で環境問題を中心に扱っていたところに、労働問題を置いたところにあると思います。それがまさに自分が置かれている状況と重なり、リアルなこととして捉えられることができるようになったからでしょう。
(前半の章でも、グローバル・サウスの問題に触れていましたが、それを近くのものとして捉えると第六章につながるかと思います)
他にも「使用価値」と「価値」を用いてブランド化や広告にかかるコストなど、希少性を高めるための営みとそれを求める消費者について第六章では書かれています。
ちなみに、この消費社会批判はボードリヤールの『消費社会の神話と構造』に詳しいので興味のある方はそちらもぜひ。
資本主義社会が先鋭化すればするほど、われわれの生活のあれこれに金銭を支払う必要があります。
例えば、水。ミネラルウォーターだけでなく、いまや水道でさえ民間委託するような機運があり、公共サービスが解体されようとしています。そうなると、水は資本主義の名のもとに希少性を高めていくことが予想されます。果たしてそれでいいのか。
そうではなくそれは水や電気、さらには労働者でさえも「コモン」として著者の言葉を借りれば「<市民>営化」することで持続可能な経済へ移行が可能だと述べられています。ひいては、それが「ラディカルな潤沢さ」が回復され、貨幣に依存しない領域が拡大し脱成長につながっていくと。
このようにして第六章が進み、ではどのようにして脱成長コミュニズムを進め「ラディカルな潤沢さ」を回復していくのか?本書はその先を提示しているのですが、ぜひその先は読んでのお楽しみに……といいたいところですが、最後にまとめとしてあえて気になったことを書いて筆を置きたいと思います。
わたしたちは価値観を転換できるのか
「脱成長コミュニズム」へと進む道は果てしなく険しいもので、実装は難しいのではないか、ということが、この本を読んでの読後の感想に他ならないのです。
たとえば、この実装は政治的な権力や経済的な権力を持つ層との対立、あるいは抵抗が予期されることがはっきりとわかるでしょう。日本でいえば昨今当たり前のように使われるようになった「上級国民」との対立。
もうこれはあれですかね。共産党宣言での「今日までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」という革命へと至る道なのでしょうか。
それでなくとも、資本主義社会に漬かりきった自分自身がどのようにして不自由を甘受するか、その覚悟はあるのか?という問いにも答えを窮するでしょう。
いずれにせよ、恐らくは本書を読んで様々な反応を自分自身の中に得られるかと思います。信じるか信じないかは、あなた次第。
結局、関暁夫かよ!!というところで締めたいと思います。じゃあの。
100日間で8kg痩せたときによく食べてた食品5選
年末までに100日間で8kg痩せたエントリ書きました。記事はこちら。
(100日目)100日間10kgダイエットのために修羅になる日記 - なんかいいことおまへんか!!
現在は短期放牧という正月太りイベントを挟んで今日から3ヶ月間で再度5kg減、体脂肪率17%を目指して再始動をかけているところです。
目標体重は年内で83kg、体脂肪率15%くらいを目安にしています。身長が180cmほどあるのでそんなところでしょう。
ぼくのように無事に正月太りイベントをこなしたみなさまに送るのが今日のエントリです。
何度かダイエットをしては増量を繰り返しているのですが、今回の100日間でのダイエットを通じて、お、これは効果がありそうだ、と感じた食材を5つほどシェアしてみることにします。
なお、ブロッコリーと鶏むね肉は基本中の基本なので、この2つは除外します。ブロッコリーと鶏むね肉はマスト。これを食べないと減量とは言えない。また、基本的な食事メニューはPFCバランスを意識したものです。糖質制限とか知らん。
ちなみにある日の夕飯がこんな感じ。ここからなんとなく食材の選び方がわかるかも。
さて、やっていきましょう。
1:もち麦
ダイエットにはオートミールがよいということはご存じの方も多いでしょうけど、なんだかんだ言ってコストパフォーマンスに優れているのはもち麦の方じゃないかと。
加えて言うと、実家から米が送られてくるもので、そちらも食べていきたいので、この100日間ではもち麦ごはんを基本的に食べていました。
もち麦の量を規定の分量より少し多めにするのがコツ。個人的には白米2合に対してもち麦1合で炊飯するのが好みです。
食物繊維やタンパク質の含有量が高く、食物繊維にいたっては、100gあたり13gと白米の26倍も含まれています。ちなみにオートミールは100gあたり7.5gなので、やはりもち麦を選択したいところ。
通常のご飯と同じ食べ方できるのもよいですね。オートミール、茶漬けだったり牛乳に浸したりと工夫が必要なので。
2:ザワークラウト
100日間ダイエットの後半戦に登場し、一気に主役級の活躍を見せました。ドイツ料理のソーセージの付け合わせに甘んじているのがもったいない。
選んだ理由はなんといっても、腸内環境の改善に役立ったことがポイントです。ザワークラウト食べた翌日の腸内の進捗がすごい。もう、ほんと、すごい……
栄養素的には乳酸菌だとか、食物繊維が要因だと考えられます。ザワークラウト、原料としてはキャベツと塩のみで乳酸発酵させてつくるので、植物性乳酸菌の塊を食べているようなものです。ちなみに全然塩っけはありません。これもポイント。
日本人はもともと漬物や味噌で植物性乳酸菌を摂取しているところがあるのですが、だからなのか、日本人の体質や腸内環境に合うのではないかと。エビデンスがあるわけではないのでご容赦を。農学系の論文で面白いのあったけど割愛。
食べ方としてはブロッコリーとザワークラウトを副菜にガシガシと鶏むね肉を食べるストロングスタイルです。酸っぱいキャベツなので、醤油をひとたらししてもいいかも。ぼくは酸味を欲しているし塩分いらないのでそのまま食べてますが。
キャベツと塩だけでつくれるので、自家製レシピもいたるところにありますが、手軽なのは瓶詰めのザワークラウトを買うこと一択でしょう。
ただし、瓶の重さも含めて1kgほどあるので、Amazon使いましょう。金額はスーパーで売ってるのと大差なし。あと、スーパーで置いていないところも多いので。
ちなみに、キューネ派かヘングステンベルク派かで好みが別れます。
キューネの方はキャベツと塩のみ。ヘングステンベルクはワインも原料に入っています。個人的にはヘングステンベルク派。酸味が優しい印象です。
3:サバの水煮缶
タンパク質に加えて良質な脂質を摂りたいときに重宝しました。脂質にもいろいろありまして。サバなどの魚に多く含まれるn-3系多価飽和脂肪酸には脂肪分解を促進させるという研究結果が出ているそうです。他にもナッツ類などから脂質を摂るのがベターとのこと。
サバ水煮缶は鍋にしたりカレーにしたりといろいろとアレンジレシピがあるので、そういった汎用性の高さもポイント。
あとなんといってもコストパフォーマンスが高い。加えて長期保存が可能なので災害時の非常食にもなる。常備しておきましょう。
サバ水煮缶はブランドたくさんあるので好みもあるかと思いますが、伊藤食品や宝幸などの国内工場品を選択するのがよいかと。海外工場だとどうしても骨やヒレなどの食感の当たりはずれが多いのと、臭みなども気になる製品もあるので。
価格帯としては150円~220円くらいが外れの無いプライシング。高くてもおいしいというわけではないのがサバ水煮缶選びのポイント。伊藤食品の美味しい鯖水煮缶はほんとうに美味しい。
4:ラム肉
1週間から10日に一度、おっしゃー今日は喰うぞー!!!!と意気込んだときによく食べてました。いわゆるチートデイとしてのお楽しみ。ラム肉の満足度、非常に高い。ダイエット的にはカルニチンとか高タンパクとか、まあそういう栄養があるみたいです。食べ過ぎはダメだけど。
ラム肉の食べ方はいろいろあって、北海道的ジンギスカンのたれで食べるもよし、アジアンテイストにクミン塩で食べるもよし。
最近ハマったのはカルディで買った羊名人というクミン塩で食べるスタイル。Amazonのレビューだとサイゼのアロスティチーニについてるアレになるとか。家庭で手軽にトリップできるのがよい。値段も手ごろなので試してみてはいかがでしょうか。
5:緑茶
急須で入れた温かい緑茶まじでおいしい。甘露とはこのこと。1日に1Lほどコーヒーを飲むヘビーコーヒーユーザーだった自分がこのところ緑茶だけで一日を過ごすことが多くなるほど緑茶にハマりました。その感動をTwitterでも書いてた。
コーヒー1日1L飲んでた自分がいつの間にか緑茶1日1.5L飲むようになってコーヒーは1杯くらいで満足してしまうようになったので緑茶ほんと美味しい。急須で入れた緑茶、適当に淹れても旨いしペットボトルで買うのが意味わからないくらいパフォーマンスが高い。
— ダイエット新吉(-8.1kg) (@nktrta960) 2021年1月3日
あと実家や親戚でいただく緑茶、けっこういい茶葉使ってたのだと、市販の茶葉を買いだしてからようやく気付いた。甘みとかコクとか100g400円くらいの茶葉と1000円の茶葉だと全然違うのな。
— ダイエット新吉(-8.1kg) (@nktrta960) 2020年12月28日
寒いこの時期は特に温かいお茶のありがたさがよく沁みる。緊急事態宣言もあり、再度在宅勤務になる可能性もあるので緑茶フルスロットルでがんばってほしい。
先ほどのTwitterでも書いてたけど、いまは100g1000円のちょっとお高めのものと100g400円ほどのリーズナブルな価格帯のものを気分によって変えてます。
サバ缶が高価格帯でもそれに比例して味が変わらないのですが、日本茶は価格帯ではっきりと香りと甘み、渋みなどの方向性が出るのが面白い。これが嗜好品の魔力。でも2Lペットボトル1ケース買い続けるよりも100g1000円の方がはるかに安いのよね。
ぼく自身が九州出身ということもあり、八女茶や知覧茶を選びがちなのですが、そこはお好みで選んでみましょう。
以上、5つピックアップしてみました。選外では無塩ミックスナッツとかもあったけど、今日は割愛。
この中でもおススメはザワークラウトですね。手軽に野菜と乳酸菌摂取できるのがポイント。あとはプロテイン飲んでガシガシ動いていきましょう。正月太りが解消されますように。じゃあの!
『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』年末年始読書2020~2021その2
有馬記念も終わり、東京大賞典も終わり、いよいよ2020年も残り1ハロンくらいになりましたね。最後の直線でのサラキアくらいの差し脚くらいのスピードを出していきたい。
クロノジェネシスおめでとうございます。本命だったけどサラキアがいなかった。オメガパフュームもおめでとう。
さて、年末年始読書も2回目です。1回目のエントリは東浩紀『ゲンロン戦記「知の観客をつくる」』でした。
『ゲンロン戦記「知の観客をつくる」』年末年始読書2020~2021その1 - なんかいいことおまへんか!!
今回読んだのは、竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』です。上質なエンタメSFでおもしろかった。
ギーク!バディ!人工知能!スラップスティック!B級映画!的なノリが展開されているので、人工知能に興味があって面白い小説を読みたいという欲求が満たされること間違いなしです。
だいたいこんな話
首都圏ビッグデータ保安システム特別法が施行され、凶悪犯罪は激減――にもかかわらず、親の借金で臓器を売られる瀬戸際だった人工知能技術者の三ノ瀬。彼は人工知能の心を読み、認識を欺く技術――Adversarial Example――をフリーランス犯罪者の五嶋に見込まれ、自動運転現金輸送車の強奪に参加するが……。人生逆転&一攫千金、ギークなふたりのサイバー・ギャングSF
タイトル(改題)について
この本が世に出る時、タイトルの改題でネットがざわついた話も記憶されている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
原題は『電子の泥舟に金貨を積んで』というSFの王道的なタイトルで、たとえば『天の光はすべて星』だとか、「たったひとつの冴えたやり方」とか「月は無慈悲な夜の女王」だとか、そういった海外SFの名タイトルを彷彿とさせるものでした。
それが、いや全然面影ないやんか!くらいに180度ひっくり返ったように出版時にこちらの『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』に改題されたわけです。
著者本人によって改題の衝撃と顛末について書かれていますので、興味あればそちらもどうぞ。
10億ゲット作者の思う『編集者は敵なのか』|竹田人造|note
読後の感想としては、個人的に今回の改題は正解だったんじゃないかと思っています。この軽薄な感じ、キャッチーな感じがとてもよいですし。カーチェイスやらカジノ、ポーカーなんかの舞台装置も出てくるので、軽いニュアンスの方がいいんじゃないかと。
そうそう、先ほどの著者noteで書かれているのだけど、この小説の作者の叫びである終盤の主張も見逃せません。
現役のエンジニアである作者の日本の機械学習や人工知能の将来を憂いながらも、それでも希望を見出すという要素があるので。泥船とは一体何なんですかね、という話に繋がってきます。
ストーリーについて
借金背負わされて臓器を売り飛ばされそうになる主人公のAIエンジニア、三ノ瀬と映画フリークの胡散臭さ満載の犯罪コンサルタント、五嶋のバディものです。キャラクターめちゃくちゃ立っているのがよい。
他にも一川、六条などクセのある人物が登場します。主要人物に数字がついているの、めぞん一刻っぽさがある。
ストーリーは三部構成になっており、それぞれ、現金輸送車強盗、カジノ(ポーカー)、カジノ(ダイヤを盗む)が主な舞台です。
興味深いのはそれぞれの章のタイトルの名前。この各章のタイトルのつけ方からしても、全体のタイトルへの思いも強かったのではないでしょうか。少し見てみましょう。
ACTⅠ 最後の銀行強盗 Going in Style
ACTⅡ 裏切り者のサーカス Tonkotsu Takers Slave Snake
ACTⅢ 修士の異常な愛情 Master's Strangelove or:How I Learned to Stop Worrying and Love AI
ポイントとしては英題ですね。
ACTⅠとACTⅢについてはパッと見てわかりましたが、ACTⅡについてはぼくはわかりませんでした。ググったらようやく出てきた。
元ネタは『裏切りのサーカス』で原題は『Tinker Tailor Soldier Spy』だそうです。ゲイリー・オールドマンだって!
ACTⅠは『ジーサンズ はじめての強盗』の原題ですし、ACTⅢは『博士の異常な愛情』そのままですね。
一度読み通してから各章の元ネタを見ているとなるほど、なるほど~~~!!!と思いました。小説読んでからの映画見る楽しみ方もいける、一粒で三度おいしいってやつですよ!
全編的に映画チックな文章のテイストなので、小説あまり読んだことないよ、という人でもすんなり入っていけるかと思います。
とはいえ、随所に頻出する人工知能関連の単語はSFならでは、といったところでしょうか。
たとえば「ディープラーニング」、「自己回帰型生成モデル」、「ウォズニアックテスト」、「ノーフリーランチ定理」、「Adversarial Example」などエンジニアならニヤリとする、しかしエンジニア以外はポカンとする言葉が満載です。
でも大丈夫。
『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』を読めば、AIエンジニアもそうでない人も人工知能関連の言葉を「完全に理解した」ことが可能です。意味はググれ。
そうそう、主人公のAIエンジニア、三ノ瀬がこういったこういった技術を駆使して犯罪のためのトリックを組み立てたり、あるいは敵方のAI技術者とバトルする展開になっているので、なるほどそういう人工知能ってそういう使い方ができるのね~~~と思うかもしれませんが、そこはSFなので悪しからず、です。武装ドローンとか出てくるし。
まとめ
この小説は早川書房の第8回SFコンテストで優秀賞を受賞した作品なんですが、巻末にその選評が掲載されています。第1回で取り上げた東浩紀も評者として登場しています。なるほど、プロはこういう読み方をしているのだなあということも勉強になりますね。
『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』はたしかにSFではありますが、現実でも人工知能で10億円ゲットする手段を開発している方がいらっしゃいますね。
具体的には競馬や競艇などの公営ギャンブルの場でよく見られています。
人工知能で合法的に10億円ゲットする方法について気になる方はそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
(100日目)100日間10kgダイエットのために修羅になる日記
はい、100日間10kgダイエットも今日で最終日です。テンションは普段どおりです。ただね、さすがに最終日なのでエントリの構成くらいは変えていこうかなと思います。いつもなら冒頭に馬体重メモを晒していたわけですが、ドラマとかアニメの最終回でよくあるオープニング曲が終盤で流れてくるパターンのオマージュ的な。
ということで、100日間無事に完走しました。おめでとうございます。ありがとうございます。
そうだ、あらかじめ言っておくけど、考察や振り返りはまた別のエントリにしますので、100日目ですがあまり長い記事にはなりません。
1日目のエントリは今は昔のnoteで始めていました。そこからいろいろとありましたね。主にnoteとcakesの炎上が。そこからホームをはてなブログに移してきたという経緯があります。久しぶりに1日目のエントリ見た。みなさんもどうぞ。
100日間10kgダイエットのために修羅になる日記(1日目)|ダイエット新吉|note
9月15日がスタートで数え間違えがなければ今日が100日目らしいです。1日目のスタートが体重95.8kg、体脂肪率24%でした。さて、100日目、今日の計量はどうなっていることでしょう。10kg痩せたのか。今日の朝イチのデータがこちらです。今日は写真も撮ったで。
まずは体重から。
88.0kgでした。続いて体脂肪率。 画像が暗いな。
体脂肪率は20.3%でした。一日目と比較してみましょう。ここでオープニング曲が流れます。各自好きなオープニング曲でどうぞ。
今日の馬体重メモ※カッコ内は1日目との比較。
体重:88.0kg(-7.8kg)
体脂肪率:20.3%(-3.7%)
除脂肪体重量:70.1kg(-2.7kg)
調教師の一言:100日間お疲れさまでした。短期放牧を挟んでまた年始に入厩ですね。
結果は7.8kgの減量です。体脂肪率は3.7%減。
ということで10kg減量まで2.2kg足らず。最後の差しが届きませんでしたね。ギリギリ掲示板内というところでしょうか。
惜しいような気もするし、筋肉も多少落ちているのが残念だしで、課題はいろいろと残っておりますね、というのが個人的な感想です。もう少し追い込めたか。
なので、100日間で10kg痩せるアレ、毎日書く日記は一旦ここで終了となりますが、エクストラステージに突入することにします。具体的には年末年始の短期放牧(休憩ともいう)を挟んで、年始から目標を設定して再スタートを切る予定です。
具体的には3月末までに体重84kg、体脂肪率は16~17%を目指したい。3か月間で4kg減、筋肉を残していくスタイルを目指します。
だからあれですね。100日目だからといってパーッと夕飯を食べるでもなく、続けていく意思を込めて今日の夕飯も例のアレです。
こんな感じです。さすがに少し疲れたので2週間ほどの短期放牧を挟んでカイバもモリモリ食べながら運動していく方向性で年始は進めていきます。
100日間で10kg痩せる企画はこれで終了ですが、ドラゴンボールで例えるならまだマジュニアを倒したところなので、亀仙人も「最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ」と言っております。
これからも定期的に更新していきたいと思います。じゃあの。
みんなもプロテイン飲もうぜ!